夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
変だよね。結婚式は挙げたのに、今初めて本来の新さんと接しているような気がするなんて。
「桃子、ペンギンがエサを食べてるぞ! 見ろ!」
嬉々と眺める子どもみたいな横顔。普段クールで感情の読めない新さんが興奮している姿に、くすぐったい気持ちにさせられる。
「どれだけペンギンが好きなんですか」
「あ 丸いフォルムがたまらない」
普段からこれだけわかりやすかったらよかったのに。
うつむいたところで人とぶつかりそうになり、肩をつかんで引き寄せられた。
「危なっかしいな、桃子は」
もう離さないとでもいうように指を絡めとられ、そのまま恋人繋ぎに。トクントクンと鼓動が跳ねて、またしても心地よさを感じる。
「俺がついてないとな」
どういう意味ですか。そう聞けたら、どれだけいいだろう。
外のエリアではセイウチのショーを観て、ふれあい体験でいろんな海の生物に触れた。イルカショーにラッコの食事タイム、全部回っていたら時間はいくらあっても足りない。
「腹減ったな。そろそろ昼にするか」
「わ、もうこんな時間なんですね」
気づくと午後二時を回っていた。夢中になりすぎて空腹なんて感じなかった。
「全部回ったな。よし、車に戻るぞ」
「あ、ちょっと待ってください。お土産を見てきてもいいですか」
「ああ、もちろんだ」
私は小走りでペンギンハウス横のお土産屋さんに駆け込み、小さなペンギンのぬいぐるみを買った。