夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
何事もなかったようにハンドルを操作する新さんを見ていると、高まった気持ちがどんどん急降下していった。
なにを考えているのかさっぱりわからない。
男性に免疫がない私の反応が面白くて、つい言っただけとか?だとすると、からかわれたのかな。あまり本気で捉えないほうがいい。もし冗談だと言われたら、傷つくのは私なのだ。
水族館では楽しい時間をすごしたというのに、新さんの態度ひとつに振り回されて気分が沈む。
「桃子」
「え、あ」
ぐるぐる考えていたら車がマンションの地下駐車場に停車していた。
「ここからは歩いて移動しよう」
新さんはペンギンのぬいぐるみが入った袋をしっかり手にして車を降りると、助手席側に回りドアを開けてくれた。さり気なく紳士っぽくて、スマートにエスコートされるのはなんとなく気恥ずかしい。
「ありがとう、ございます」
手を差し伸べられて、私は戸惑いながらもその手を取った。
どういうつもりでしているのかはわからないままだけれど、そこに特別な意味があればいいと願わずにはいられない。
「天ぷらは好きか?」
「はい」
「昼には遅くて夜には早いが、この時間ならまぁ大丈夫だろ」
天ぷらの店へいくのだろうか。
当然のように絡め取られた指先がくすぐったい。