夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
搬送先は有無を言わさず海堂救命救急病院。ストレッチャーに移動させて救急外来へと急いだ。休日も救急外来は慌ただしく、スタッフは皆走り回っている。
「海堂先生、お疲れさまです」
「すぐにルート確保して輸液全開。そしたら上下腹部エコーだ。あとCTも。採血も全項目頼む。結果が出たらすぐに教えてくれ」
「わかりました!」
ルートを確保している間に、部屋の隅で上だけスクラブに着替えた。桃子の意識は完全にない。だが命に別状はなさそうだ。
上下腹部エコーの結果、胆石胆嚢炎でまちがいはないだろう。さらにCTでも胆嚢が腫れ上がり、明らかに所見が俺の見立てた疾患を示していた。
「採血データです。炎症反応が跳ね上がって、ビリルビン値の上昇も見られます」
「まちがいない、胆石胆嚢炎だな」
「オペ適応ですか?」
「いや、炎症が引くまではなんとも言えないが……何度も繰り返すようなら適応だろうな」
胆石胆嚢炎は胆嚢にある石が胆嚢の出入り口を塞ぐことによって起こる。小さな石ならすぐにはずれるので問題はないが、入口を塞がれると厄介なことに様々な症状が出現する。
胆嚢に含まれる胆汁は主に油物を食べたあとに胆嚢から排出され、分解する役割を果たしているのだが、胆石によって阻害されると胆汁を排出できず、胆嚢が収縮して痛みが出現するというわけだ。