夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
放散痛といってかなりの激痛。小さな胆石が無数にあって入口を塞いでいる場合は、超音波によって石を破砕する方法もあるが、大きな石の場合はオペ適応となる。ただ炎症が落ち着くまではオペはできない。
一旦入院して様子見だ。もちろん食べられないため、絶食で二十四時間の点滴生活となる。
特別室を用意し、入院の手続きを済ませてから桃子が眠るベッドのそばに立った。心配で心配で仕方ない。
早く目を覚ませ。そして俺を見ろ。
かなり強引に今日まできたという自覚はもちろんある。卑怯だと言われても構わない。どんな手を使ってでも彼女を、桃子を手に入れたかった。
彼女との出会いは五年前の春。彼女がまだ大学生の頃にさかのぼる。桃子の父が経営する料亭でバイトしていた彼女を初めて見たときは衝撃を受けた。
特別美人というわけではないが、控えめでかわいらしい印象。どこにでもいるようなありふれた女性だったが、なぜだかひどく目を奪われた。今まで恋愛経験がなかったわけではない。それなりに付き合った女性はいたが、ここまで惹かれたのは桃子が初めてだった。
着物姿は上品で清楚。まるでときが止まったかのようにそこから目が離せなくて、チラチラと視界に入りこんでくる。
先付けとして出されただし巻き卵が絶品で思わず「うまい」とつぶやくと、照れくさそうに頬を赤らめた桃子が「今日のは私が作ったんです」とためらいがちに微笑んだ。