夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
結婚……。
いずれ誰かのものになるのかと思うと、じっと息を潜めているのに耐えられなくなった。どうすれば振り向いてもらえるのかはわからない。
だけど他の男のものになるくらいなら、俺がこの手で幸せにしてやりたい。
ほとんど話したこともないのに、あの一瞬で恋に落ちた。この五年間、初恋をこじらせているだけだったがもう限界だ。
久しぶりに実家に顔を出した俺は、父に強引に桃子との見合いを取り計らってもらった。これまでにもさんざん見合い話はあったが、結局は桃子を忘れられず、断ってばかりだったので、俺の心境の変化に父はふたつ返事で了承してくれた。
気に食わないやり方だが、この際手段は選んでいられない。
次の日の朝、実家から出勤した俺は偶然にも電車の中で桃子を見つけた。すると突然近くにいた男性が苦しみ出し、なにやら様子がおかしかったので急いで駆けつける。
案の定、そこには男性が倒れて意識を失っていた。恐らく心筋梗塞だろうと思い、必要な処置を施す。すると意外にも桃子のほうから声をかけられた。
テンパっているのに気丈に振る舞う彼女が愛おしくて、つい頬がゆるみそうになる。心臓マッサージを繰り返し、腕をぷるぷる震わせている姿に胸を打たれた。