夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
形だけの結婚だとしても、俺を意識してくれるならそれでよかった。時間をかけて俺という存在感を知ってほしい。桃子の中になくてはならない存在になるように、じっくりと。
いざふたりきりの生活が始まってみると、意識させるどころか逆に意識させられてばかりで戸惑った。ふとしたときの仕草や表情に、心臓が悲鳴を上げる。
桃子の気持ちが大事だと言った手前うかつに手は出せないが、それでも一緒にいるとどうしても我慢できずに触れたくなる。
さっきだってペンギンのぬいぐるみを俺にくれた桃子がかわいくて、つい唇を求めていた。深いところで繋がりたい、心も身体も。
「桃子」
「んっ」
そっと髪を撫でるとうっすらと目を開けた桃子は、わけがわからないと言いたげにポカンとする。
「わ、たし……あれ? どう、して。天ぷらは?」
「倒れたんだよ。まだ痛むか?」
頬が赤らんで目が潤んでいる。炎症反応が高かったので熱が出始めたんだろう。そんな桃子に胸をときめかせているなんて。
「はい……」
「だったら寝てろ」
「ううっ、でもまだ……天ぷら。新さんの話だって、最後まで聞いて、な……」
そう言いながらも、まどろみの中へ意識が落ちていっているのか、途中で言葉が途切れた。