どうも、弟です。

「…………??」


しかし、いつまで経っても唇にくるであろう感触がこなくて。

代わりに、私の体をあたたかい何かがふわりと包みこんだ。


「……っ」

「そんな、怯えんなよバカ」


雪くんの優しい声とぬくもりで、私はやっと、彼に抱きしめられているんだと知った。

さっきまで華奢だと思っていた雪くんの体に、すっぽりと収まっている私。


秋くんより身長は低いし、声も幼さの残る少し高めの声だけど。


……やっぱり雪くんも、『男の子』なんだなあと感じる。


初めて路地裏で雪くんと会った時。

二度目にこの部屋で雪くんと会った時。


怖くて緊張して、体は動かないし言葉も出なくて……もう二度と関わりたくないって思ったけど。


こうして雪くんの家庭教師として通うことで、知らなかった『雪くん』を知ることができた。


素直じゃなくて、でも頑張り屋さんで。

小さく見えても、実はこんなに大きくて、男の子で。

意地悪なところもあるけど……。


最初より、嫌いじゃないよ…雪くん。



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