どうも、弟です。
他の女子の前でなら、あんなふうに傷つけないように話せるのに。
「バッカじゃないの!?基本的に女子に『ブス』は禁止に決まってんでしょこの合計点数30点以下!!」
屋上の入り口から、またもや聞き慣れた声がした。
そこには、仁王立ちをしたツインテールの女が。
「探したわよ雪~!」
「マジ、ほんとマジで今は近寄らないで腹減ってるからその匂い嗅ぐと気持ち悪くなるから、森野…」
近寄ってくる奴の名字を呼ぶと、さっきまでの笑顔が一瞬で消えてしまう。
あ、またやってしまったと思ったときにはもう遅かった。
「だから!ミニカって呼んでって言ってるでしょ雪~!!」
「ぅえ……きもちわるい…」
涙を溜めた森野が、一気に俺に抱きついてきた。
空腹の俺は抵抗なんてできずにそのまま押し倒される形になる。
おかげで森野の強い香水の甘ったるい香りが、ダイレクトに俺の嗅覚を刺激して、吐きそうだ…。
「ねえ雪、さっきの女の話もっと聞かせてっ?ミニカの雪に近づくなんて許せないっ」
俺の首に腕をまわしたまま、甘えた猫撫で声で続ける森野。
「それなら雪の永遠フレンズの俺に聞けよ森野!!」
「はあ!?意味分かんない黙ってろ30点以下男!あと森野って呼ぶな!!」
「自己最高得点をバカにすんな森野~!!」
俺の耳元で二人のバトルが繰り広げられる。
いつもなら俺がここで一言「やめろ」と言えば、二人とも若干大人しくなる流れなのだが。
「……はあ…」
口から出るのは、今日何度ついたかわからない大きなため息だった。
目を開けても閉じても、真面目に授業を受けてみても、課題に手をつけてみても、賑やかなこいつらと一緒にいても。
脳裏に浮かぶのは、あの日のあの二人の姿だ。