どうも、弟です。
***

「雪、そういえばもうすぐ期末テストじゃん」


俺の気持ちなんて何も知らない秋は、晩飯を作りながら俺に話しかけてくる。


「飯できたよ、食う?」

「いらない」


ソファでアプリゲームをする俺は、その質問にだけは即答した。


「ったく、父さんも母さんも、今は単身赴任でいないんだから、俺の飯で我慢してくれよ」

「……」


『一花、今日どうだった』


ちょっとでも気を緩めると、そう問いかけてしまいそうで。

出てきてしまいそうな言葉ごと、ゴクンと唾を飲み込んだ。


あの日から、もう一か月経つのに。

当たり前の話だけど、一花は一度も俺たちの家には来ていない。


「期末テスト、また一花ちゃんに頼む?」

「っ」


俺の気持ちなんてなにも知らないくせに。

まるで見透かしたかのようにどんぴしゃで一花の名前を出してくる。

その名前が出された瞬間、ゲームで忙しなく動いていた俺の指が、一瞬止まった。




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