どうも、弟です。

秋の、そういう所が嫌いなんだ。

なんでもできて、誰からでも好かれて、父さんも母さんも、みんなみんな秋のことばっかり。

どうしたら大人が喜ぶか、周りの人間が喜ぶか知ってて、それを行動に移している秋が嫌いだ。

そうやって俺を見下してる秋が嫌いだ。


お前もこうしたらもっと周りに好かれるんだぞって、そう言われてるみたいで。

秋の優しさを素直に受け止めることができなくて、いつの間にか秋自身を嫌悪して育った。


秋がいい子でいればいるほど、俺は悪い子になっていくんだ。


残っている焼きそばを一気に口の中にかっ込み、皿と箸を台所へ持って行こうと立ち上がったとき。


「明日、一花ちゃんにお前の家庭教師また頼むから!」

「は!?余計なことすんなって!!」

「俺が!!」

「っ」


普段温厚な秋が

俺に向かって大きな声を初めて出したから。


不覚にも驚いて、一瞬息が止まった。



「俺が嫌なんだよ、一花ちゃんが辛そうなのは、嫌なんだよ!!」



苦しそうな表情で、秋はそう叫んだ。




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