どうも、弟です。

「うん、一花見てると、頑張ろうって思える。まだまだ勇気は出ないけど、少しずつ前向きな私になれてる気がするもん」

「……」


確かに、すみれは中学の時からマイナスな発言が多かった気がする。

『私なんか』とか、『できない』とか。

それが最近なくなって、最近じゃこうして私の話を聞いてくれることの方が多くなった。


「一花は、いつも私の前を歩いて。自分の気持ちに嘘つく一花なんて、私嫌いだよ?」

「……っ」


自分の、気持ちに……


「本当は、気づいてるんでしょ?一花」

「…………」


すみれが、両手を伸ばして私のほっぺにそっと当ててきた。


「怖くて、なかなか前に進めない気持ちはわかるから、ゆっくり自分の気持ちと向き合いなよ」

「すみれ……」

「私も、一花を見習って頑張りたいって思えた。ありがとう」


目を細めて笑うすみれが、女神様みたいに思えた。

せっかく止まったのに、そんな女神様のせいでまた涙出てきちゃったよ~……


「一花が迷ったときは、私がこっちだよって言うから……私が迷ったら、一花がこっちだよって言ってね」


その一言で、私の涙腺は一気に崩壊した。

すみれがいてくれるから……私、もう少し頑張れそうだよ。



こうして、花火大会が終わったその日。




私は、『秋くんの彼女』じゃなくなった。





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