どうも、弟です。

秋くんに続いて教室に戻り、衣装作りをしているすみれの元へ向かう。

すみれは手先が器用で、早々に衣装係に抜擢された。

私は反対に不器用すぎて、こうして物を運んだり片付けたりしかほとんどみんなの役に立てていないのだけれど。


「すみれ、何か手伝えることある?」

「何よ一花、ずいぶん楽しそうな顔して」

「えっ」


パチン、と糸を切ったすみれが、私を見る。


「秋くんから聞いたよ~、雪くん来るんだって?」

「すっ、すみれまでからかうならもう手伝わない……!!」

「えへへ、でも私は会うの初めてだし楽しみだな」


あ、そうか。

そういえばすみれは、雪くんに会うの初めてなんだ。


「雪くんの口の悪さに圧倒されないようにね?」

「え~やだ、会う前から怖いこと言わないでっ」


あんなにつまらなかった文化祭の準備。

それが不思議とわくわくしている自分がいて、いつの間にか楽しく感じていた。



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