どうも、弟です。
「一花はいいよね、髪が長いんだもん」
下を向いていた顔をやっと上げたかと思ったら、今度は私への嫉みが飛んできたから苦笑いしてしまう。
「あんたは髪の長さでかわいさが決まるとでも?」
「そうじゃないけどさ、少なくとも私なんかよりかわいいじゃない。」
そこまで言って、すみれの両手が私の顔に伸びてくる。
「こんな、伊達眼鏡なんか取っちゃえばいいじゃない」
「っ、やめてよ」
私のメガネに触れたすみれの手を、そっとどけた。
「ごめんごめん、それが無いと人と話せないんだもんね」
そう。
私、風晴 一花は、自分に自信が無いあまりに人と自分の間になにかひとつ壁が無いといけない性格になってしまった。
それは、もうすぐ中学校三年生になった今でも治らず、私にとってこの伊達眼鏡はなくてはならない存在となっている。
これが伊達眼鏡ということを知っているのは、ここにいる幼なじみのすみれだけ。
「もう、わかってるならそういうこと言わない、しない!」
今ので少しずれてしまったメガネの位置を元に戻している時だった。