どうも、弟です。
「たぶん、あの日から俺は一花が好きだよ」
「……っ」
横顔のラインが整っていて、名前のせいもあってか寒い季節がよく似合うなあ……なんて見惚れてしまっていたとき。
そう言いながら私を見てきた雪くんの栗色の瞳と視線が重なって、ドキッとする。
「一花、俺の話聞いてくれる?」
「…うん、もちろん」
私がそう答えると、雪くんの整った唇が優しいかたちに笑みを作った。
「俺、秋に嫉妬してた。一花のことだけじゃなくて、俺の今までの人生の中で、秋って言う人間に嫉妬してた」
雪くんの声はとても落ち着いていて、でも確かに私の胸にしっかりと届いてくる。
「一花も見たとおり、俺少し前までケンカばっかりしてた。何でもできるいいお兄ちゃんが羨ましくて、『秋の弟なんだからもっとちゃんとしなさい』って親や先生から言われ続けて、それがすげえムカついて……周りから言われるほど、秋がいいお兄ちゃんでいるほど、俺はどんどん悪い奴になっていってた。秋に似ているのも嫌で、髪の色だって買えたし瞳の色も変えたかった」
「………」
秋くんは言っていた。
雪くんが羨ましい、でもお兄ちゃんだから俺がしっかりしないとって。
けれどしっかりできているからこそ、構ってもらえる雪くんが、やっぱり羨ましいって。