どうも、弟です。

「何かで秋に勝ちたかった。唯一勝てるのがケンカだってわかってからは、ケンカ続きでそれこそ親に迷惑かけてた。それでも、秋よりもすごいところを俺の中で見つけたかった」

「………」

「でも、一花の言葉で目が覚めた気がした。今のやり方じゃだめだって」

「……私なんかの言葉が…?」


長い間雪くんを支えてきたやり方が、私の言葉ひとつでそんな簡単に間違いだと気づかせるなんて。

そんなこと、本当にあるのかな……?


「俺も、一花に俺として認知してもらいたいって思った」

「……雪くんとして…」

「秋の弟じゃない、一人の月形 雪として、一花に知って欲しい。知ってもらった上で、振り向いて欲しいって思った」


落ち着いて話していた雪くんの瞳に熱が宿っているのがわかる。


「一花のおかげで変われた。勉強だって今じゃクラスの上位だし、ケンカもしなくなってから口の悪さもだいぶ落ち着いた方だと思うし…」

「……?」


雪くんの手が、私の頬に触れてくる。

空気は冷たいのに、彼の手はほんのり温かかった。


「前よりも素直に自分の気持ちを言えるようになった」

「………」


雪くんの吐息がかかってしまうくらい距離が近くて。

周りはとても静かで、まるで時が止まったみたいだった。


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