どうも、弟です。

あの日のことは、鮮明に思い出せる。

自分の名前を名乗ることですら一生懸命で

初対面じゃないはずなのに、初対面みたいに話して。


複雑だったのは確かだけど…やっぱり嬉しかった。

それから雪くんの家庭教師をすることになって、私と秋くんの距離は一気に縮まった。


そしてこの場所で私はあなたの彼女になって

花火大会のあの日に、彼女じゃなくなった。


それでもこうして楽しくお話できるのは、きっと秋くんが本当にいい人で、そんな秋くんがやっぱりすきだからだ。


「秋くん、騙してたみたいになって本当にごめんなさい」


そう言って、頭を下げる。


秋くんと、雪くん。

それぞれの話を聞いて思った。


大切な人に、自分を一人の自分として見て欲しいって思う気持ちは、みんな同じだった。


知らないうちに、私ばかり苦しくて辛い思いをして、そのうえで努力してると思ってた。

でも、どこかで誰かも同じように苦しんで、努力してる。


大切な人に、自分を認めてもらうために。

自分を好きになってもらうために。



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