どうも、弟です。
「ね、ねえ雪くん……本当にどこに……!」
しばらく走った先で、どこまで行くのかと聞こうとしたとき。
雪くんは急に立ち止まって、一言呟いた。
「着いたよ」
「はあ、はあ……着いた…?」
膝に手を置き、乱れた息を整えてから雪くんを見上げる。
「………っ」
息をするのも忘れて、私はバカみたいにその場に突っ立ってしまっていた。
だって目の前に、大きなもみの木が立っている。
赤や緑、白や金色。
まるでたくさんの蛍が集まっているみたいに、細くて小さな光だけど
それがいろんな色に輝いているもみの木が立っている。
「きれい……」
「でしょ」
「うん……」
知らなかった。
こんなところに、こんなに大きなクリスマスツリーがあるなんて知らなかった。
ツリーの逆光で、雪くんの表情がよく見えないけれど……たぶん優しく笑ってくれている。
こんなに大きくて綺麗なツリーを見て、隣には雪くんがいて。
雪もしんしんと降ってきて寒くなってきたはずのに、胸の奥底は熱く泡だった。