どうも、弟です。
雪くんの体温がじんわりと伝わってきて体の中がやさしく柔らかくなる。
冷えていたはずの指先まで溶けていくような安心感が流れて、心地いい。
「俺も」
「……っ」
強張った部分をそっと撫でるような、そんな優しい声が聞こえて
我慢していたわけでもないのに、じーんと鼻の奥が痺れるくらいに熱い涙が溢れた。
そんな私の肩に手を置いて少し体を離した雪くんは、腰を折り、優しい表情のまま私を覗きこんでくる。
「今日の一花は、今までのどの一花よりもかわいくて綺麗だね」
「……っう、…そんな、こと……っ」
かわいいわけない。
きれいなわけない。
こんなに涙と鼻水でぐちゃぐちゃな私が。
せっかく頑張ったメイクだってもうすっかり崩れてしまってるはずなのに。
そんな私なのに、絶対にそんなはずないのに、なんでそんなふうに言えるの?
「だって、初めて俺の為にオシャレしてきてくれたんでしょ?」
「……っ」
「そんなの、可愛くてしかたないに決まってんじゃん」
そう言った雪くんの笑顔は、
明るさがこぼれるように振りまかれる。
また抱きしめられて、今度はさっきよりもずっと強い力で抱きしめられて
周りなんてお構いなしに泣いた。
そんな私を、雪くんはずっと優しく抱きしめてくれていた。