どうも、弟です。
しかし、弟くんはそんな私を見て、冷ややかな、意地の悪い微笑みを口元に浮かべた。
大丈夫。
きっとバレてない。
この弟くんにとって私は「お兄ちゃんが連れてきた家庭教師的存在」なのだ。
あの日のことなんてさすがに覚えているわけない。
それに、私はこの高校デビューで髪型もばっちり変えたし、私服もなるべくジャージは着ないように心がけているし、今はメガネだってしていない。
あの日の私とは、別人!!
私は、路地裏でのあの地獄絵図を思い浮かべては、それを全部吹き飛ばすように首をぶんぶんと横に振った。
……このまま、気づかない振りをしていた方が何かとよさそう。
「ねえ」
「ひゃいっ!!?」
またもや突然かけられた弟くんの声に、今度は変な声を上げて小さく飛び跳ねてしまった。
「……なに、おねーさん緊張してんの?」
椅子に座ったまま、頬杖をついているのと反対の手で、私の手をすくい上げるように触れてくる弟くん。
「………っ!!」
おっ、男の子に手を触られてしまった……っ!!?