どうも、弟です。
その声の主が誰なのか瞬時に理解できた私は、もちろん声のした方を見ることなんてできなくて。
とっさに下を向く。
足音が、どんどん私たちの方へ近づいてくるのを聞いて、それに比例するように私の心臓の音も大きくなっていった。
「一花ちゃん、やっと会えた!」
私のすぐ横に立った彼……秋くんは、膝を折って私と視線の高さを合わせてくれた。
「どこに行ってもなかなか会えなくてさ」
「ふ、不思議だね……」
当然でしょ!?
秋くんの気配を感じたらすみれや物陰に隠れたり、歩いていた道を引き返したりしてたんだから!
「探したんだよ……?」
「っ」
そんな、しゅんとした顔でそんなこと言わないでよ。
期待しちゃうじゃない。
私のこと、そんなに探してくれていたのかなって。
頑張ってくれていたのかなって、期待しちゃうじゃない……。
「……ご、ごめんなさい……」
同じ中学校だったことすら知られていない。
私の存在なんて彼の中にはいなかった中学校時代。