どうも、弟です。
「……」
私は、秋くんに渡されたあんパンを手に持ったまま、秋くんの出通っていった教室の扉を見つめていた。
「ど……どうしよう……」
「大変なことになっちゃったね、一花」
この状況でも変わらず、もぐもぐとおかずを口にしているすみれ。
私は彼女に向き直り、あんパンを鞄に仕舞う。
「断り切れなかった私が悪い……それは認める……けど……」
それでも、あの弟くんと毎週会わなくちゃいけないなんて……
そんなのつらすぎるよ~!!
「でも、一花はやっぱりすごいよ」
「……え?」
すみれは、食べ終わったお弁当箱にそっと蓋をしてから、私を見た。
「なんか、いつの間にか普通に月形くんと話してるし」
「……あ」
そういえば。
すみれに言われて初めて気づいた。
そう言われてみたら、あんなに緊張していた名前呼びも、今じゃ普通に呼んだり呼ばれたりしている。
彼の前で立っていることすら緊張していたのに、ましてや目を合わせるなんて……って思っていたはずなのに。