伝えきれなかった想い、届かなかった願い
グランドの脇の近道を通り、
喫茶店に向かう。


「うわ!またこの季節がきたねー!

私なら絶対やだー。」

桜がグランドを指差して笑っている。


グランドに目をやると
野球部に入部したばかりの1年生が
手書きで大きく名前がかかれた白い布を
前後に縫い付けた中学生の頃のジャージを着て
練習をしている。

毎年この時期に見られる光景だ。

先輩や先生が
名前をわかるようにする為らしい。

遠くからでもよく見える。


「ねー。楓みてー。

あの子、ザ!野球部!って感じの名前だね」

桜の指差す方を見る。
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