嘘つきシンデレラ
「何考えてんの?
俺といて、まだ兄貴のこと?」
駿の言い方に心臓が驚く。
沈み込んでしまいそうなソファ。
さとみの横に、駿が腰かける。
カラン。
駿が傾けたグラスの氷の音。
「兄貴のどこがそんなにいいの?」
「…駄々洩れですか」
観念したような顔のさとみ。
「ふっ。
うん」
駿が笑って言う。
「理由なんて、
本当は自分でもわからないんです。
社長のこと、ふつうに怖いですよ。」
さとみも笑う。
「ほんとに、すごい怒られるし、
怒られてばかりだし。
私なんて、迷惑かけるだけで」
社長といると、緊張したりドキドキしたり
忙しくて。
苦しい。
嫌われたくなくて、
嘘つきな自分が嫌になったりするんです。
私と社長じゃ
世界が違うってわかっているのに、
社長は、恋なんかじゃないって
わかっているのに
せつなくて、
胸が締め付けられる思いに、
逃げたくなるのに。
なのに、
社長が、いつも私を助けてくれるから。
心がキュウって
なるような言葉をくれたりするから。
すごいかわいい笑顔で
笑ったりするから。
「ダメだって、心が聞いてくれないんです」
さとみが一生懸命笑う。
「勝手に恋しちゃったんです」