嘘つきシンデレラ



「やあ。駿さんー」




「駿さん…」




「っ…。」




涙で詰まるさとみの声。




逡巡したように、




うごきを止める駿。




目をつぶって、




大きなため息をついた。


 

さとみを、押さえつけていた手が緩む。




力が抜けたように、




頭をさげた駿と




さとみの目が合う。




悲しそうな表情で




駿が口角だけ上げて言った。




「なんで、兄貴の名前呼ばないんだよ」




「…痛いです」




さとみがギュっと




目をつぶって、




涙を、ポロポロこぼしながら言った。




「こんなこと、




私も




駿さんも




痛いだけです」




さとみを見下ろす駿の瞳が、




泣きそうな表情になる。




こんな時に、おれのこと。



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