嘘つきシンデレラ




間接的な照明で、




夜に浮かびあがるように




照らされたプールサイド。




水中からのライトで、




水色にきらめく水面。





立ち尽くしている駿。





後ろから足音がした。




コートのポケットに




手をいれたままの兄貴が、横に立った。




「なんだよ」




水面から視線を外さずに、




駿が言う。




「知らねえよ。」




ぶっきらぼうに、兄貴が言う。


 


無言の2人




プールを見つめて、




兄貴がポツリと言った。




「なつかしいな」




「たいして、泳いだこともないくせに」




俺が言うと



「何言ってんだ。




お前が俺と入りたいって、




泣くから。




しょっちゅう、入らされて。




おんぶで、この中歩きまわって。




覚えてないのか。」




呆れたような兄貴。








覚えているよ。




今、鮮明に思い出した。



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