嘘つきシンデレラ
「うちのゴタゴタに巻き込んで、悪かったな。」
戻ってきた社長が、
私の顔をみて、言った。
疲れた表情の社長。
出張の戻り日、今日だよね。
今日帰って、
そのまま来てくれたのかな。
「私こそ、ごめんなさい。
迷惑ばっかり」
「何で、お前が謝るんだよ」
まだ、ソファに座ったままだった私の前に、
社長がしゃがみこむ。
「大丈夫か」
下から私を見上げる視線。
「社長が助けてくれたんで、
大丈夫です。」
思わず、微笑んでしまう。
「それに、駿さん。
きっと、本気じゃなかったんですよ。
私なんかに。」
笑っていうさとみ。
さとみを見つめて、
黙っていた社長が言った。
「私なんかって、言うな」
諭すような社長の声。
「お前いい女だよ」
社長の瞳も、声も
優しくて。
胸が痛くなるほど。
「そんな」
何言って。
いい女だなんて、顔が赤くなってしまう。
否定しようとするさとみに
「いい女だよ」
そんな
そんな、優しい目で見ないで…。
「もっと、自信持てよ。」
社長の潤んだ瞳に、
私の後ろから降る真っ白い月が映って、
キレイ。
あまりにも、キレイで
「社長」
「ん?」
「わたし、社長が…」