嘘つきシンデレラ
先ほどまでのビジネスライクなしゃべり方ではなく
葛西本人の喋り方で、社長が言う。
社長が時計をのぞき込む。
意味がわからない。
どういうこと?
そんな、それって私にできるの?
でも、きっと私には
選択肢なんかなくて
質問するような甘えも、許されなくて
きっと、答えを待ってくれる時間もない
「やります
やらせて下さい」
返事はわかっていたように、社長が立ちあがった。
デスクから内線を鳴らす。
「この後のアポキャンセル」
「ちょっと出てくる」
社長は一方的にそれだけ秘書に告げた。
キーケースを手に取り
「行くぞ」
「え? あの」
私?
私だよね。一緒にどこか行くの?
どこへ、何で?
戸惑うさとみに、手を差し出す社長。