嘘つきシンデレラ
社長。
わたしがどうして、
社長に何も言えなかったか。
嘘をついたか。
智くんのためでも、
何で、あんなことしたか。
わからないでしょ。
きっと、社長は何もわかっていない。
ううん。
社長はわかる必要もないと
切り捨てたんだね。
おじいさん。
ごめんなさい。
私では、やっぱりだめだった。
社長は私なんか、必要ないんだって。
社長。
さようなら。
…
「姉ちゃん!」
「どうしたんだよ。何が」
人が行きかう歩道。
智が駆けよってくる。
「姉ちゃん?」
視線をあわせようとする智。
そこで初めて、智に気づいたようなさとみ。
「智くん?」
倒れそうにみえるさとみの肩を
智が支える。
涙で濡れたさとみの頬。
涙はとまらなくて、
さとみ嗚咽をもらした。