嘘つきシンデレラ
アイを知らない王子様
何であんなことをしたのか。
最初は顔も見てなかった。
契約不履行の社員。
ただ解雇するだけだったはずだった。
「お金がいるんです。」
すごい声で叫ぶから。
その時初めて、さとみの顔をちゃんと見た。
驚いたように、目をぱっちり開いて
ふっくらした唇で必死に訴える。
色白の肌が、ピンクに染まって、
話をきくつもりなんかなかったのに。
いつものように、事務的に終わるはずだったのに
目をひかれてしまった。
叫んでいる言葉は、物欲的で軽蔑に値するのに。
まるで子供みたいに叫ぶ顔。
焦点が定まらない瞳は
空をとらえて
潤んでいる。
表情が幼くて、なぜかはかなげに見えて。
保護欲にかられた。
気づいたら秘書を追い払い、提案していた。
衝動的に動いたことなど ほぼないのに
俺らしくない。