嘘つきシンデレラ
深夜のキッチンで
深夜一時。
さとみはのどが渇いて、ベッドを出た。
部屋のドアを開けたところで、気づく。
自分の家ではないと。
寝ぼけた頭で一応、自分の恰好をチェックする。
上はクリームイエローのTシャツに、
下は白の短パン。
大丈夫。
見せたい恰好ではないけど、
見られて困る恰好でもない。
まあ、まず社長がいることもないだろうけど。
キッチンで、大きな両開きの冷蔵庫を開ける。
グラスについだお茶を口につけたところで、
どこかのドアが開く音が聞こえた。
え。社長いる?
さとみは一気に、
心臓が緊張したように
鳴り出したのが分かった。
あ、でも部屋なら、こっちにはこないだろうし。
どうする。
見つからないうちに部屋に帰る?
いや、別に見られて
困ることしているわけじゃない。
もう一度自分の恰好をみる。
大丈夫だよね。
でも、こんな夜に
冷蔵庫あさっているって思われるのも。
でも、今慌てて部屋に帰ったら、
ちょうど鉢合わせするんじゃ。
でも、でも、でも、
ばかり浮かんで
行ったり来たりしながら、
焦ってくる。
やっぱり、戻ろう。
コップどうしよ。
洗っているひまないかも。
部屋に持って帰って、明日の朝洗おう。
よし。
慌てて、戻ろうと決意したさとみは、
勢いよく振り向いた。
ちょうど、社長がリビングに足を踏み入れるのと
同時だった。