嘘つきシンデレラ
「社長、
社長?」
社長が汗かいて、
苦しそうな顔している。
早く起こしてあげないと。
「大丈夫です。
大丈夫ですよ、社長!」
「夢です。
夢だから…
大丈夫」
目覚めない社長を、片手で揺すると、
驚いたように起きた社長が、手を振り払った。
「誰だっ」
その手が、さとみの持っていたグラスに当たり、
さとみのTシャツにかかる。
少しだけ起き上がった体制で
社長が動きをとめて、さとみの顔をみた。
社長は、さとみが認識できているのか、
いないのか。
社長の前に乗り出したまま
水に濡れてびっくりしているさとみを
突然、
問答無用に引き寄せた。
「きゃっ」
ベッドに倒れこむように、
引っ張られたさとみが、反応する間もなく。
「冷たい」
社長がぼそりと言う。
今度は無言で、起き上がり
さとみの両手を
バンザイのような姿勢にしたかと思ったら、
さとみのTシャツを
サッと、上から引っ張り脱がした。