嘘つきシンデレラ
きみのとなりで
息ができない。
気づくと、圧迫されるような水の中
見上げる先に水面が遠い。
海の中で溺れていると気づく。
泳げるはずなのに、
手も足も思うように動かない。
広い広い、海の中。
必死にもがく。
気づくと
海の水が、いつの間にか泥に変わっている。
視界は真っ黒だ。
急いで浮上しようとするのに、
ぬめった泥をかきわけられない。
誰かが足を引っ張っている。
暴れて離そうと必死なのに、
その手は離れない。
一本だった手が増える。
もう一人、また一人。
その手は増える。
その手たちは一様に、
葛西を泥の底へ底へと、引きずり込もうとする。
…
…
声が聞こえた。
タールコールのような
真っ黒な視界の中で。
誰かの葛西をよぶ声。