嘘つきシンデレラ
リビングのドアの擦りガラスをのぞきこむ葛西。
ガラス越しに、Tシャツに短パン姿のさとみが
見える。
あれがあいつのパジャマらしい。
どこかで聞いたことのある、
メロディを口ずさみながら、窓を拭いている。
あれはファッションなのか。
肩が出ている。
違うな。
服がくたびれているんだな。
華奢な肩が、Tシャツからのぞいている。
葛西がなんとなく、観察していると
小さいからだをリズムにあわして
動かしていたさとみが、ちょっと止まる。
また動き出すさとみ。
「社長はこわい」
さっきのメロディにあわせてさとみが口ずさむ。
まさに、リビングに入ろうとしていた、
葛西の手が、ドアノブを持ったまま
とまる。