嘘つきシンデレラ
きみのスペシャル
「おかえりなさい」
「まだ起きていたのか」
今日も、深夜をまわった帰宅の葛西。
ジャケットを脱いで、
袖をまくる葛西の近くを
ウロウロしているさとみ。
「何だ?」
「お腹すいてないかなって、思って」
後ろに両手をまわしたさとみが、
期待した顔で尋ねる。
「スペシャル。
食べたいって言っていたから。」
「あ、気が向いたら、
というか。食べたかったらで」
急に自信をなくした、
さとみが取り繕うように言う。
こいつ。
それでこんな時間まで待っていたのか。
おれのあんな一言で。
湯気の立った“スペシャル”は、
熱いくらい暖かくて、
優しい味だった。
湯気の向こうに
さとみのうれしそうな顔が見える。