涙色パレット
話題のアニメの話、マンガの話など、お互いの趣味の話を楽しむ。萌は初めて人と話すことを楽しいと思ったのだ。

しかし、楽しい時間は長くは続かなかった。絵のことで二人はぶつかるようになったのだ。

きっかけは、二人が共通で好きになった小説だった。その小説には挿し絵がなく、主人公の女の子のことは文章でしか説明されていなかった。二人は、その女の子と小説に登場する人物たちを一緒に描くことになった。しかしーーー。

「ねえ、主人公の服装の説明をよく見て!主人公の服は白いローウエイトワンピースよ!萌が描いているのはパーカーじゃない!!」

主人公を萌が描いていると、他のキャラを描いていた女子生徒が慌てて言う。萌は首を傾げた。

「私のイメージでは、こっちの服の方が似合うかなって……」

「ちゃんと小説通りに描かないと!!」

「でも、楽しかったらそれでいいんじゃない?」

「それじゃあ描く意味がないでしょ!」

その日以来、萌は女子生徒とよく揉めるようになった。やがて、女子生徒は萌に話しかけることはなくなり、初めてできた友達は萌のもとを去っていった。
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