あまい・甘い・あま~い彼が見つからなくて
自分のデスクの椅子に腰かけ大翔は、私に一瞬鋭い視線をむけたあと、カルテに視線を落とした。

「えっと…」

興味津々で身を乗り出して私の話を待っている高木先生は、大翔を気にしていいよどんでいる私の言葉が待ちきれないようで畳み掛けるように質問してきた。

「この間の救命士と付き合いだしたんだろ?
なになに、この休みの間にばったり運命の再会とやらをしちゃったの?」

「まぁ、そんな感じです」

「…颯馬は」

「えっ?」

颯馬は知ってるのか?」

声の主に目を向けると、ムスッとした顔をしていつのまにか私に視線をむけていた。

「…お店で颯馬と杏ちゃんには会ったよ。
颯馬から手を差し出して握手してた」

「…そうか…」

それきり押し黙った大翔は、またカルテに視線を落とし私を見ることはなかった。
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