あまい・甘い・あま~い彼が見つからなくて
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診療を終えて結婚式に出るために三年ぶりに東京へ帰る船に乗った。
来月にはまた東京での生活に戻るが、三年ぶりに大翔や家族と顔をあわせることが楽しみだった。

竹島桟橋まであと三十分ほどで到着する。

わくわくしながら下船準備を始めていると船内アナウンスが流れた。

「お客様の中で医療関係者の方がいらっしゃっいましたら至急ご連絡ください。
船内で体調を崩されたお客様がいらっしゃいます…」

最後まで聞かずに私は医療鞄を手にして部屋を飛び出した。

五十代男性が脳梗塞で倒れ一刻を争う状態だった。

救急車、病院に手配をして私も病院に付き添う段取りをとった。

到着した船に救急隊員がタンカーを持って乗り込んでくる。

そして…私たちはお互いの姿を捉えて息をのんだ。

そこには三年ぶりに会う彼がいたから。

"会えた!" そう喜んだのも束の間一瞬で私の気持ちは大きく沈んだ。

彼の左手薬指には指輪がはめられていたのだ。
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