センチメンタル・ファンファーレ
▲17手 コバルトブルー・スパークル
「これって今やってるの? 生放送?」
「この格好、どっかで見たことあるなー。望の七五三の衣装、こんな感じじゃなかった? 写真ない?」
「七五三の写真ならあるけど、家の押し入れの中」
「七五三って言えば、有理も去年やったんだけど、緊張しちゃってすっごく変な顔だった」
「見た見た! 年賀状の写真でしょ? かわいかったよ~」
「え? これ、川奈くん? 今出てるの? 有理ー! 川奈くんだよ。一緒にお風呂入ったお兄ちゃん」
「……このメガネじゃないひと?」
「そうそう。背中洗ってもらったんでしょ?」
「へえ~~、この人が弥哉ちゃんの」
「おお! 川奈くんだ! これ何の試合?」
「神宮寺リゾート杯」
「これ優勝したらどのくらい賞金出るの?」
「お義姉さーん、お寿司って届けてくれるんだっけ? 取りに行くんだっけ?」
「十二時半に取りに行くことになってる。茶箪笥のところに封筒あるでしょ? その中にお金入ってる」
「誰が行くの?」
「祐太郎さんに頼んだけど。祐太郎さーん、行けそう?」
「ママー、お菓子たべていい?」
「今お寺に行くから、帰って来てからね」
「弥哉ちゃんの彼氏ってのは、勝ってるの? 負けてるの?」
「そろそろ移動した方がよくない? あれ? お布施ってどこだっけ?」
「茶箪笥の……」
「それお寿司のお金だよ」
……………うるさい。
もう誰が何の話しているのかわからない。
それでも他人の家のパソコンとテレビを占領して、一番いい席を陣取っているので、文句はぜんぶ飲み干した。