愛は惜しみなく与う③
何が面白いかって、見た目はすごくガラ悪い。
声もでかいし、主に朔が…
でも泉が怒るんやろうな
ホームにしゃがみ込んだりせずに、ピシッて立って、しっかり列になる
礼儀は正しい
「おーい!おっせーぞ!うんこか!」
遠くから大きな声で言う朔を恨む。
やめーや!周りの人みんなこっち見たやん!
「ほんと、やめてほしいよね。朔とは他人のフリしたいよ…」
響もため息
そりゃそうや。少しクスクス笑われた
「ははは!スッキリしたか?」
ガハガハ笑う朔の肩辺りを1発殴っておく
あたしに続けて響も
「いてーな!肩パンか?やるか?勝負!」
騒ぎ出す朔に
「うるせぇ。置いてくぞ」
泉が低い声を出す
そして朔が、ぐぬぬぬと少し悔しそうな声をだして黙った
朝から元気やなぁ
ボケーっとしてると新幹線がホームに。
止まるために、ゆっくりになる新幹線
目の前を流れていく車両
あたしは本当にただただそれを眺めていた
反射して後ろの景色が映る窓
同じスピードで流れていく景色の中で
その窓に映る
赤い髪の男がニヤリと笑った
息が詰まる
おるわけないやろ。ここに
パッと振り返るが、そこには誰も居ない
一瞬スローモーションになる新幹線の動きも、瞬きをすれば元どおり