愛は惜しみなく与う③
溶けない氷
「ちっ。雨だけやめばいいのに」
朔は未だにシトシト降り続ける雨をみて、ため息をついた。
杏はカッパ着る?と女に聞いている
「カッパなんか着ないよ」
クスクス笑う女に、杏も笑っている。
こう見れば普通に仲のいい女友達に見える。さすが杏だな、と思う
「響は?カッパいる?」
「俺もいらねーや」
子供が着るようなポンチョ型のカッパを杏は頭から被っている
「お前、よくそんなダサい格好して、俺らと歩こうと思えるな」
「は?何その上から目線。朔と歩くのとか、パジャマで充分や」
「なにー?!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ朔と杏。
それを女は笑って見ていた。
何も違和感はないんだ。普通なんだよ今も。でも胸騒ぎがするんだ…
そして毛穴から汗が噴き出すような嫌な感覚
「杏ちゃんは、カッパでも可愛いよ」
慧は、はいどーぞ。と杏に傘を渡している。杏も慧の言葉に笑顔でありがとうと微笑む
一人でバカみたいに緊張している。
まだ何があるかなんて分かってないのに
「響?大丈夫?」