愛は惜しみなく与う③
パッと頬に温かい手が触れる
「顔色悪いよ?やめとく?」
心配そうに覗き込む杏。俺が心配されてどうする。
「大丈夫だよ。行こう」
「……気楽にな」
ポンと背中を叩かれて、杏は朔と女の隣に並んだ
何も起きないといいな
そう思ってる時って、何か起こる。
「俺も近くにいるから。頼んだ」
泉に送り出されて、雨の降る少しひんやりとする外へ出た
夏なのに、少し涼しい
かき氷…食べてみたかった店のやつだけど、素直に喜べないでいる。
あの事件があってから、女が怖い。
でも少しマシになっていたと言うか、ここまで酷くなかった。
長谷川は…怖い
なにを考えているか全くわからないから
「えー?この道右やろ」
「は?左だろ」
いつも通り杏と朔の言い合いが始まる。
朔も杏のことが好きなんだろ?なのになんで、杏に突っ掛かるんだろうか。
恋愛の好きがあんまり分からないけど、朔のは空回りしている気がする。
「ばーか!地図読めねーなら、黙ってついてこい」
そう言う朔に、うっさい!と一言いう杏