愛は惜しみなく与う③

ちょうど朔から電話がくる

「あ、もしもし?」

『お前ら大丈夫か?喧嘩したの?』

「ちがうよ。杏がお腹痛いって言うから」

『トイレダッシュあんなに全速力のやつ見たことねーよ』


ケラケラと電話越しで笑う朔の声につられる。たしかに…あんな本気の走りでトイレに向かう人初めてみたよ


「俺、杏が出てきたら一緒に向かうよ。先公園行ってて?」

『わかった。ウサギ捕まえてくるわ』

「優しくね」


朔と長谷川には先に行っておいてもらう。
朔はきっと大丈夫だろう。何かあったとしても、なんとかするだろうし

今は俺は杏のそばに居てあげなきゃ


携帯を眺めていると、杏からLINEが…


『耐えた!』


そ、そっか…!耐えたならよかった。
画面を見てクスクスと笑ってしまう。
普通男に耐えたとか言う?ほんと面白い

ある意味癒し

耐えたという一言のLINEに、返信っと…


「外で待ってるねっと…」


傘に当たる雨は少し弱まった気はするが、地面は濡れていて、心なしかさっきよりも気温が下がった気がする
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