愛は惜しみなく与う③
「ごめん、泉。ちょっと目を離したら女がいなくなってた。今から杏のいるところに戻るから」
『…駅前のトイレだな?俺も向かってるから。もう手段は選ばなくていい。杏が怒ろうが、あの女は殴ってでも捕まえろ』
わかってるよ
杏に何かしたら許さない
「おい!状況は?」
「…杏が駅前のトイレに鞄取りに行ってる。すぐそこだから!」
一直線の道にでると、トイレが目視できる
雨はまだ降り続けるが、傘なんてさしてられない。
「ごめ、先行って!」
朔の方が走りが早いから
チラリとこちらを見て、バッと走っていく。
電話を片手に走りにくい
「ごめ、俺も切るね!できるだけ…すぐ来て」
『あぁ、勿論だ』
泉との電話を切り、今度は杏にかける
でてくれ。頼む
願いも虚しく、杏は電話に出ない
「おい!トイレに居ねーぞ!!」
女子トイレから朔が出てくる。
周りの人は何事かとキョロキョロこちらを見ている。
誰か…見てないかな
「すみません!金髪の髪の短い女の子、この辺居ませんでした?」
手当たり次第に尋ねる。
女に声をかけることも躊躇わない。
どこだよ、杏