愛は惜しみなく与う③
そう思い
振り返ると何故だろうか
男達は笑っていた
「杏ちゃんコッチ!」
突然走り出した紗羅ちゃんに腕を引っ張られて、行きたい方向とは別の方へ身体が動く
「ちょ、ちょ!公園いくんやろ?」
「あの人たち、公園の方から後つけられてたから」
え?そうなん?
「いや、でも。逃げなくていいよ。悪いことしてるのコッチじゃないし。戻るで」
手出してきたら自己防衛するだけやし。
山道の方へ歩こうてする紗羅ちゃんを引っ張って、元の場所に戻ろうとしたが、紗羅ちゃんは足を止める
えっと?
「怪我した?」
下を俯く紗羅ちゃんの顔を横から覗き込んでみると、なぜか涙を流していた
「え?待って?どういうこと?ごめん。何かされてた?」
ポロポロと溢れる涙
ハンカチなんて女子らしいものが入っていないこの鞄
紗羅ちゃんの涙を拭うものは無い
「違うの…」
なにこれ
泣いちゃうような出来事あった?
突然の出来事に戸惑い、そしてあたしは、周りへの注意を欠いていた
「ごめんね、杏ちゃん」
最後に見たのは、涙を浮かべて、笑った紗羅ちゃん
そして身体に痺れる痛みを感じて、あたしは地面に倒れた