愛は惜しみなく与う③
隣に来いと、泉はジェスチャーをする
それをみて朔は、席を移り泉の隣へ。
そして泉が、携帯の画面を朔に見せると、朔は「あぁ…」と納得したように声を出す
それでも何か引っかかるのか、くそっと声を漏らした
「お前は悪くない」
「分かってるけど…」
肩を落とす朔に、慧も声をかける。
すぐに眠りに落ちた杏を、みんなは心配そうな顔で見つめていた。
「どうかしたの?」
そんな様子が気になったのか、紗羅は尋ねたが、その問いには誰も答えなかった。
ただ見守るように、彼女を見る
「忘れるくらい、楽しませよう」
泉はそう言って、再び目を閉じた
その様子を見て朔もまた、窓の外に視線を戻した
「ごめんね?みんな疲れてるみたい」
慧は隣に座る紗羅に気を使い、そう言う。それに対して、ただ微笑んで紗羅も目を閉じた
「ほんと、杏ちゃんが元気ないと、みんな元気なくなっちゃうな…」
夏休みにしては、人が少ない新幹線
目的地まで、あと1時間ほど
何事もなければいいなと、誰もがそう思っていた