愛は惜しみなく与う③
真相

「サトルのところじゃなくて、俺のところにおいでよ」


「…アホやろ」


それだけ答えておく
もう、感情を殺さないとここは乗り切れないから。

「杏ちゃん!!」


部屋の片隅で震える紗羅ちゃんは、あたしの名を呼んだ。
それに力なく笑って答えるしかできない



いまは手も足も縛られていない
多分紗羅ちゃんほって、烈火を気にしなければ、逃げれる。

けどそれは違う


「普通に声出せよ?我慢しないで。それとあんまり泣くなよ?泣けばサトルは喜びそうだから。

ただ快感に身を任せろ。あんたにとっても、悪いようにはしないから」



これでサトルはお前を諦めるから

まるであたしを救っているかのような言い方をする水瀬。
この人も歪んでる


泣くなって?

泣かへんよ


こんなんであたしは泣かへん


「キスだけは、やめておいてやるよ」

耳元でそう言われる。
変な気遣いどうもありがとうございます。

もう話しかけないで欲しい


再び首元に水瀬の舌が這う


天井の木の年輪でも見ておこう


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