愛は惜しみなく与う③
あたしはもう、視線を逸らすことしかできない
「ねぇ、杏って名前だよね?今だけそう呼ぶよ。あんたじゃなくて……。あの男に帰ってもらってくれない?邪魔されちゃたまんないし、俺もそろそろ我慢の限界」
そう言って上に来ていたTシャツを脱ぎ捨てた
「帰ればさ?ここに侵入してきた烈火の奴らにつけている男達と、烈火の元総長の店に送り込んだ、大勢の男達を、何もせずに帰えらせるからさ?」
…海斗さんの店の方まで。
もうどこまでも追い詰めたいんやな
「わかった。帰るように説得する」
あたしの役目や。泉達を説得なんて、できる自信はない。
ただあたしを見捨ててくれるようになら、できるかもしれへん
あたしは…
最後に人の優しさを感じれたからそれでいい
「無茶苦茶にしてやろうと思ってたけど、優しくするよ。前戯も丁寧にしてやるよ。だからさっさと説得しな」
水瀬はそう言ってあたしに携帯をみせる。
その画面は、泉から着信が
通話ボタンを押して言った
「ちょっと、最後にお別れの言葉でも言ってもらおうかと思ってね」