愛は惜しみなく与う③

あたしはもう、視線を逸らすことしかできない


「ねぇ、杏って名前だよね?今だけそう呼ぶよ。あんたじゃなくて……。あの男に帰ってもらってくれない?邪魔されちゃたまんないし、俺もそろそろ我慢の限界」


そう言って上に来ていたTシャツを脱ぎ捨てた


「帰ればさ?ここに侵入してきた烈火の奴らにつけている男達と、烈火の元総長の店に送り込んだ、大勢の男達を、何もせずに帰えらせるからさ?」

…海斗さんの店の方まで。

もうどこまでも追い詰めたいんやな


「わかった。帰るように説得する」


あたしの役目や。泉達を説得なんて、できる自信はない。
ただあたしを見捨ててくれるようになら、できるかもしれへん


あたしは…


最後に人の優しさを感じれたからそれでいい



「無茶苦茶にしてやろうと思ってたけど、優しくするよ。前戯も丁寧にしてやるよ。だからさっさと説得しな」


水瀬はそう言ってあたしに携帯をみせる。

その画面は、泉から着信が


通話ボタンを押して言った


「ちょっと、最後にお別れの言葉でも言ってもらおうかと思ってね」

< 191 / 410 >

この作品をシェア

pagetop