愛は惜しみなく与う③
杏を掴もうとする男と杏の間に、近くにあった椅子を放り投げる
2人ともパッと避けて、杏だけを引き寄せた
その体は冷たくて震えていて…
とても小さくなっていた
杏は背は低くはないが、俺からしたら小さい。腕にすっぽりと収まる杏を、二度と離してはいけないと思った
壊れてしまう。
このままだったら
「避けへんかったら、当たってたで?」
いつもと同じように言う杏だが、全然違った。目は赤く、眉も下がり、見てられなかった。
無理矢理感はあまりなく、一つずつ綺麗に外されたブラウスのボタン
その隙間から見える、杏の白い肌に、男の跡が残っているのを見て、気が狂いそうになる
黙ってボタンを閉める
あぁ。杏は諦めてたんだな。俺らがもっと頼りになる存在なら…
杏は諦めずに、俺が助けにくるのを…
俺たちを守るためじゃなくて、勝つために…行動できたのかな
俺らの存在が、杏の足を引っ張ったのかな
悔しいな
誰よりも守ってやりたいと思ってるのに。
こんなことで…俺は杏から離れないのに。