愛は惜しみなく与う③
「待ってください!」
『とりあえず、書類後で持っていきますね』
ナースはそう言って内線を切りやがった。
こちらから話せるのはナースコールだけ。
「おい、何だって?」
「…わかんねーけど、杏が病院を移動するって。その書類にサインしてくれって」
落ち着けよ、俺
病院移動を電話で話したって言ったよな?
医者は今日はこの病室に来ていない。
てことは、何か杏の身に起きて、悪いところが見つかったとか、そういう事でもないはず。
なんだ?電話で移動申請って
よく分からない出来事が起きて、二人して混乱していたら、病室の扉が開く
そこには
背の高い
男が立っていた
誰だ?
そう尋ねようとしたその時
「…っ!!!!」
片手で防げない!?避けるまもなく、躊躇もなく…顔面にその拳は飛んでくる
足を踏ん張り、杏のベッドには当たらないようにする
こいつ…強い
拳を防いだ手はヒリヒリとする
「ほう…そこの窓から下に落ちればいいのにと思いながら殴ったんですが。意外とやりますね」