愛は惜しみなく与う③
それは本当に突然だった


部屋に入ってきた男に、殴りかかられた。それも突然


男はスーツを来て、白手袋を外した


なんとなく分かった


その見た目で、誰なのか





「杏様を守れなかった事を悔やむんでしたら、私の拳を止めずに、顔で受け止めてみては如何ですか?
まぁ、あと一秒たりとも、あなた達に時間をかけるつもりも無いので」


どいてください


男は、物凄い力で俺の肩を押した


そうか



「あんた、志木さんだな?」



この人が…杏の幼い頃からそばに居て…杏が唯一心を許せたという男の人



「…目上の人には、さんを付けて呼ぶという事は理解しているようですね?」


嫌味ったらしく笑う志木さんは



誰がみても完璧な男だった


すらっとしたスタイル
小顔に、清潔感のある黒髪
黒のスーツを着こなして、腕に見える時計は、ハイブランドのもの

そして何より



強い




「病院移動の話は聞きましたね?サインや手続きは私がしましたので、貴方がたは、もう帰ってください」

< 215 / 410 >

この作品をシェア

pagetop